オニールの成長株発掘法【第4版】要約と考察

オニールの成長株発掘法とは?

「オニールの成長株発掘法」とは、アメリカの著名な投資家ウィリアム・J・オニールが提唱する株式投資法です。 比較的小規模で成長性の高い企業の株式を、独自の銘柄選択法「CAN-SLIM」を用いて見つけ出し、短期間で大きな利益を狙う手法です。 強気相場、弱気相場といった市況に左右されずに利益を上げることを目指しており、 ウォーレン・バフェットの「バリュー投資」とは対照的な投資法と言えます。

オニールは、「高く買ったものをさらに高く売る」という、一般的な「安く買って高く売る」という投資の考え方とは異なる視点で成長株投資を捉えています。 これは、成長の初期段階にある企業の株価は、すでに割高になっている可能性があるものの、さらなる成長によって株価が上昇し続けることを期待する投資法です。

本書では、1880年から2009年にかけて大化けした100銘柄のチャートを分析し、成長株に共通する特徴を明らかにしています。 これらのチャートから、株価が大きく上昇する直前に形成されるパターンを学び、売買のタイミングを計る方法を解説しています。 また、従来のバリュー投資とは異なり、企業の簿価や配当金、PERといった指標を重視しない点も特徴です。 オニールは、これらの指標は過去の業績を表すものであり、将来の成長性を予測する上ではあまり役に立たないと考えています。

CAN-SLIMとは?

CAN-SLIMとは、オニールが提唱する成長株発掘のための7つの要素からなる頭文字です。 これは、「長期にわたって継続して上昇する可能性が高い企業を機械的に選び出す手法」 であり、オニールの成長株発掘法の根幹をなすものです。それぞれの要素を以下の表にまとめます。

要素説明
C(Current Quarterly Earnings)当期四半期のEPSと売上高 – 前年同期比でEPS(1株当たり利益)が20~50%以上、売上高も大幅に増加している企業。
A(Annual Earnings Increases)年間EPSの増加 – 過去3~5年間、EPSが継続して増加している企業。ROE(自己資本利益率)は17%以上、優れた銘柄では25~50%。
N(New)新興企業、新製品、新経営陣、新高値 – 新しい何かを持つ企業は、成長の潜在力が高い。新高値を更新する銘柄は、上昇トレンドを示唆。
S(Supply and Demand)需要と供給 – 発行済み株式数が少なく、需要の高い銘柄。自社株買いを実施している企業も好ましい。
L(Leader or Laggard)主導銘柄か停滞銘柄か – 業界内で上位3位以内に位置し、市場をリードする企業。
I(Institutional Sponsorship)機関投資家による保有 – 成長性の高い企業には、機関投資家の資金が流入する。
M(Market Direction)株式市場の方向性 – 全体的な市場の動向を把握し、強気相場の中で投資を行う。

成長株を見つけるための具体的な手順

オニールの成長株発掘法では、チャート分析とファンダメンタル分析の両方を活用します。

チャート分析

  • 過去の成長株のチャートパターンを分析し、株価上昇前の特徴を把握する。 特に、「カップ・ウィズ・ハンドル」 などの典型的なパターンを認識することが重要です。
  • カップ・ウィズ・ハンドルとは、株価が上昇後に30%程度下落し、その後反発してカップのような形を形成し、さらに小さな下落を経て取っ手のような形を作るパターンです。
  • 取っ手部分で株価が上昇に転じ、出来高を伴ってカップの縁を突破したところが買いポイントとなります。
  • この買いポイントは、多くの場合、カップを形成する前の高値よりも低い位置にあります。
  • 出来高の変化に注目し、機関投資家の動向を掴む。

ファンダメンタル分析

  • EPS、売上高成長率、ROEなどの指標を分析し、企業の収益性と成長性を評価する。
  • EPSは前年同期比で比較し、業界の季節変動の影響を除外することが重要です。
  • ROEは、企業の収益性を測る指標であり、高いROEは効率的な経営を示唆します。
  • 新製品、新経営陣、業界の動向など、企業の将来性を左右する要素を検討する。
  • 機関投資家の保有状況、自社株買いなど、需給関係を分析する。
  • 機関投資家は、豊富な情報と資金力を持つため、彼らの動向は株価に大きな影響を与えます。
  • 自社株買いは、企業が自社の株式を買い戻すことで、発行済み株式数が減少し、1株当たりの価値が高まるため、株価上昇につながる可能性があります。

本書で紹介されている銘柄選定方法

本書では、以下の指標を用いた銘柄選定方法が紹介されています。

  • EPS: 前年同期比で20~50%以上の増加が理想的。 3~5年以上、継続して増加している企業はさらに有望。
  • 売上高成長率: 売上高もEPSと同様に増加していることが重要。 これは、企業の成長が持続可能であることを示唆するからです。
  • 相対力ランキング: 他の銘柄と比較した株価の強さを示す指標。ランキング上位の銘柄は、上昇トレンドに乗りやすい。
  • RSライン: 相対力ランキングをチャートで表示したもの。上昇トレンドにある銘柄は、RSラインも上昇傾向を示す。

オニールの成長株発掘法のメリットとデメリット

メリット

  • 明確なルールに基づいて銘柄選択を行うため、感情的な判断に左右されにくい。
  • 短期間で大きなリターンを狙える。
  • 市況に左右されにくい。
  • 個人投資家でも実践しやすい。

デメリット

  • 成長株は株価変動が大きいため、リスクが高い。
  • 頻繁な売買が必要となるため、手数料などのコストがかかりやすい。
  • チャート分析やファンダメンタル分析の知識が必要となる。
  • 銘柄選定や売買タイミングの判断が難しい場合がある。

本書で紹介されているリスク管理の方法

損切り

損失を限定するために、株価が購入価格から7~8%下落したら売却する。 株価が下落し始めた場合、早めに損失を確定することで、大きな損失を防ぐことができます。

資金管理

1銘柄への投資額を全体の25%以下に抑えるなど、分散投資を行う。 1つの銘柄に集中投資すると、その銘柄の株価が下落した場合に大きな損失を被る可能性があります。分散投資によって、リスクを軽減することができます。

オニールの成長株発掘法を実践する上で重要な3つのポイント

  1. CAN-SLIMの7つの要素を理解し、徹底的に銘柄を選ぶ: これらの要素を満たす銘柄は、成長株となる可能性が高い。
  2. チャート分析を習得し、適切な売買タイミングを判断する: 株価パターンや出来高の変化を分析することで、最適な売買タイミングを掴むことができる。
  3. リスク管理を徹底し、損失を最小限に抑える: 損切りルールを守り、資金管理を徹底することで、大きな損失を防ぐことができる。
  4. 少額から投資を始める: 投資初心者や資金が少ない場合は、500~1000ドル程度から始めて、徐々に投資額を増やしていく方法も有効です。

オニールの成長株発掘法についての考察

オニールの成長株発掘法は、明確なルールと豊富なデータに基づいた投資法であり、多くの投資家に支持されています。しかし、市場環境や個々の投資家の状況によって、必ずしも有効とは限りません。実践する際には、本書の内容を深く理解し、自身の投資スタイルやリスク許容度に合わせて、柔軟に運用することが重要です。

特に、近年はテクノロジーの進化やグローバリゼーションの影響により、市場環境が大きく変化しています。そのため、本書で紹介されている内容をそのまま適用するのではなく、最新の市場動向を踏まえた上で、独自の分析や判断を加える必要があるでしょう。

また、本書ではチャート分析が重視されていますが、チャートパターンはあくまでも過去のデータに基づいたものであり、未来の株価を正確に予測できるわけではありません。ファンダメンタル分析と組み合わせることで、より精度の高い投資判断を行うことが重要です。

結論

オニールの成長株発掘法は、成長株投資における有効な手法の一つと言えるでしょう。しかし、市場環境の変化や個々の投資家の状況に合わせて、柔軟に運用することが重要です。本書で紹介されているリスク管理方法を徹底し、損失を最小限に抑えながら、成長株投資に挑戦してみてはいかがでしょうか。本書を参考に、自身の投資戦略に合った方法で、成長株投資に挑戦することをお勧めします。

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